Vol.112「初春に夢の音を聴くコンサート」



『堀江トリオ』の堀江恵太です!
2020年の末に『佐渡裕とスーパーキッズ・オーケストラ』の仲間たちと演奏会をさせていただいてから、もう一年ですね♪
 今回は、海外在住のメンバーが帰国できないのですが、その分、関西在住の素晴らしい奏者のみんなと、弦楽アンサンブルを
お届けします。
音楽は調和。和はなごみ。『わの空間』桜の庄兵衛さんでの演奏は僕たちにとって『なごみの時間』 格別なひと時です。
兄、牧生も参加するので、年明け早々、賑やかになること間違いなし(笑)
皆さまにお会いできるのを楽しみにしております!

★2022年1月16日(日)

昼の部13:00開演(12:30開場)60名様

夕の部16:30開演(16:00開場)60名様


★参加費 3,000円

 

★出演

YOuthful DreAmerS(右から読めば SADOYutaka)
   ヴァイオリン:堀江 恵太(ほりえ けいた)
          :柳楽 毬乃(なぎら まりの)
           ヴィオラ:丸山 緑 (まるやま みどり)
   チェロ:堀江 牧生(ほりえ まきお)
   コントラバス:松本 友樹 (まつもと ともき)

★プログラム

   G.オンスロウ 弦楽五重奏曲第28番
   G.ロッシーニ 弦楽のためのソナタ第2番 イ長調

       他

 



★プロフィール

堀江 恵太(ヴァイオリン)北野高等学校123期卒。「佐渡裕とスーパーキッズ・オーケストラ」第二期生。京都市立芸術大学を首席で卒業し、ウイーン国立音楽大学修士課程をR.キュッヒル氏のもと最優秀で修了。第六回横浜国際音楽コンクール第一位。群馬交響楽団やシンフォニア・アルシスOSAKAに客演コンサートマスターとして出演する他、「ケイタ・リング・カルテット」「スーパークラシックアンサンブル」を主宰し、大好きな室内楽に情熱を燃やしている。

 

■柳楽 毬乃(ヴァイオリン)島根県出身。「佐渡裕とスーパーキッズ・オーケストラ 」第八期生。京都市立芸術大学を経て、同大学院音楽研究科修士課程器楽専攻(弦楽)を首席で修了。第8回松江プラバ音楽コンクール第1位及びコンクール大賞受賞。第16KOBE国際音楽コンクール優秀賞他受賞多数。東京国際芸術協会より受講費全額助成を受け、ウィーン国立音大マスタークラス派遣。 現在、スーパーストリングスコーべに在籍。Sony Music 主催 STAND UP! ORCHESTRA メンバー。

 

■丸山 緑(ヴィオラ)東京音楽大学、及び同大学院科目等履修ヴァイオリン専攻修了。在学中よりヴィオラを始め、2010年よりイタリアに渡りフィエーゾレ音楽院で奨学生として研鎖を積む。弦楽器、室内楽部門ともにイタリア国内外のコンクールで第一位受賞。ヨーロッパやアメリカで演奏活動を行う。帰国後、兵庫県立芸術文化センター管弦楽団でヴィオラ・フォアシュピーラーを務める。オーケストラ以外にも室内楽などの演奏活動も積極的に行っている2017年より京都市交響楽団ヴィオラ奏者。

■堀江 牧生(チェロ)「佐渡裕とスーパーキッズ・オーケストラ」第二期生。9歳で初めてオーケストラと共演して以来、関西の全てのオーケストラと共演。ソリスト。東京音楽大学を経てチャイコフスキー記念国立音楽院チェロ科を実技第一位で卒業。第10回全日本ビバホールチェロコンクール第二位。松方ホール音楽賞、青山音楽賞受賞。201617年ロシアボリショイ劇場団員。2022年デビューCD発売予定。

 

■松本 友樹(コントラバス)兵庫県立西宮高等学校を経て、京都市立芸術大学音楽学部を卒業。「佐渡裕とスーパーキッズ・オーケストラ」第一期生。2017年、オーディションに合格し、ソリストとして現田茂夫指揮日本センチュリー交響楽団と協奏曲を共演。現在フリーのコントラバス奏者として全国各地で演奏活動を行っている。201719シーズン、兵庫県芸術文化センター管弦楽団アソシエイトプレイヤー。 


   『初春に夢の音を聴くコンサート』          内山 美帆

 

目には見えないけれど確かに目の前で増幅されていく、観客の胸というか身体のどこかしらを熱く、熱くしていくエネルギーを「熱量」と言うならば、こと音楽におけるその影響力の大きさには驚かされるものがある。そしてこの「熱量」は生の演奏でしか体験することができない。

それは勿論、鍛錬を積んだ奏者の方々の演奏技術がベースにあってこそだとは思うが、演奏技術ではない部分で、聴く側に押し寄せるように流れ込んでくる、まるで自分がその音楽の中に飲み込まれていくような感覚を、熱量の多い音楽に触れると覚える。 

その名の通りの若い精鋭たちが集まったYOuthful  DreAmerSのコンサートは、1st2ndヴァイオリン、ヴィオラ、チェロの編成によるベートーヴェンの「弦楽四重奏曲 第3番 ニ長調 作品18-3」からスタートした。

弦同士がパッセージを繋いでいく時のなんとも言えない高揚感、4人の音が重なり合った時の、つい身体がつられて揺れてしまうような、(私はなぜか)眉間が(いい意味で)締め上げられるようなあの独特の感覚を味わいながら、お互いの音が絡み合って熱量が増していくあの感覚を思い出した。

体から放出されるエネルギー量が見えているはずがないのに、互いの熱量が絡み合ってうねるように巻き上がっていくのが肌感覚で分かる。そんな中ヴァイオリンが繊細に切り込んでいったり、音の混じわり方も変わってクライマックスへ向かっていく。非常にドラマチックな展開に耳も目も離せない。 

とても贅沢なことに昼の部、夕の部ともに聴かせて頂いたことで、昼と夕での奏者の方々のアプローチの違いのようなものも感じた。ロッシーニの「弦楽のためのソナタ 第2番 イ長調」は1st2ndヴァイオリン、チェロ、コントラバスという編成。ヴィオラのパートをチェロが担当し、チェロのパートをコントラバスが担当するというスタイルで面白い。第1楽章、ヴァイオリンの柳楽さんの速く駆け上がっていくようなフレーズが、昼の部よりも勢いが増しているように感じ、勝手に胸が高鳴った。

その後に続いたロッシーニの「弦楽のためのソナタ 第3番 ハ長調」では、駆け上がるように重なっていく4人の音がどんどん熱を帯びていく。不穏な空気と哀愁が漂う音楽の中で軽快に跳ねる1stヴァイオリンや、下の方で流れる音がコントラバスの重低音だと聴こえ方も変わり、その上でチェロが伸び伸びと響き渡る様子も印象的。 

オンスロウの「弦楽五重奏曲第28番 ト短調 作品72」。第一楽章、速いパッセージを5人で繋いで、受け渡しながら盛り上がっていく音楽。第二楽章、朗々と歌い上げるヴィオラがとても印象的。優しい穏やかな始まりに哀愁が混じり、そこからの幸福感に満ちた盛り上がりに身体が包まれていく

と、ただただ抽象的で語彙力に乏しい私の感想なんてものはさておき、目下のテーマである「熱量」に関して、YOuthful DreAmerSは5名それぞれが、それぞれの熱の出し方で音楽に厚みをもたらしている。 

ヴァイオリンは花形と言われるがごとく、その切なげで美しい音色を堀江恵太さんと柳楽毱乃さんという違った個性が先頭に立って音楽を引っ張っている。そして油断するともっていかれてしまう()その豊かな響きで途端に色を変えていく堀江牧生さんのチェロ。静かにずっと音楽の底を流れ、下から迫ってくるように響いていく松本友樹さんのコントラバスは、とても静かにけれども常にその音楽の下支えになり、なくてはならない安心感を与えている。そして歌い上げた瞬間にハッとさせられる太く美しい響きを持った丸山緑さんのヴィオラ。大きく目立つことは少なくとも、謂わば関節と関節を繋ぐような、音楽の流れになくてはならない存在とし常にそこにいる。

 

この5名が集まり、それぞれの個性を絡ませながら作り上げていく音楽は、まだまだこれから熱を帯びていくであろう可能性に満ちた「夢の音」を聴く時間となった。