桂九雀プロフィール
1979年(昭和54年)3月1日 桂 枝雀に入門。
マイクロフォンを使う必要のない会場で、生の声、生の三味線、生
1984年 放送作家・東野 博昭が旗揚げしたカラードシアター・ヘテカラで演劇の初舞台。以
2005年7月に落語的手法による芝居「噺劇(はなしげき)」を
上方落語独特の演出「ハメモノ」を、和楽器以外(ハーモニカ、バ
オーケストラやフルートアンサンブルと共演した「ピーターと狼」
2013年、吹奏楽団・セントシンディアンサンブルと創作した吹
奈良県王寺町での「子ども落語教室」、NHK文化センター「落語
趣 味
将棋(アマチュア三段)・詰将棋創作・クラリネット・ギター
<初笑> 西木 ひとみ
穏やかな年明けも過ぎ、正月気分も抜けた1月半ば、久しぶりの落語会でワクワクの日を迎えました。桂 九雀さんのお噺を聞くのは初めてでナマ囃子も期待一杯。
当日の会場のお部屋のそこかしこ趣のある設えでご当主の心のこもった会場づくりが感じられました。ずいぶん前の落語会では高座はビール瓶の黄色い空きケースを積み重ねたもので苦労されていることを思い出しそっと覗いてみたら、なんと立派な移動式の組み立て舞台!後でお聞きしたら九雀さんが運んでこられたとか。時の流れと九雀さんありがとう。
夕の部、まずは前座の桂九ノ一さん登場。「九ノ一」という名前から女性かと思いきや丸刈りの若者、元気いっぱいの話ぶりです。雨具がなく貸すことができないことをうたった娘の歌の意味も分からず歌道に『暗い』ことを嘆き、のちに大歌人になった道灌の故事を教えてもらった八五郎が雨具を借りにきたらこの歌を使おうと待ち構えていたのに借りに来たのは雨具ではなく暗い道を照らす提灯であったというお噺。終える頃には手拭を手に汗びっしょりの熱演でした。
名前の由来は九雀さんの一番弟子なので「九の一」とか。納得です。この名前は忘れませんよ。九ノ一さんあせらずね、一歩づつ進んで下さい。人生の経験が語りにも表れますこれから、これから。ファイト!
九雀さんの落語を聞くのは初めてでどんな方かな?と期待いっぱいです。いよいよ九雀さんの登場。「元犬」は白い犬が人間に生まれ変わってのいろいろな「生き違い?」ワンワンと吠える九雀さんが本物の犬のように見えてきました。二席目は「佐々木裁き」心やさしい江戸南奉行佐々木信濃守と頓智頓才のある桶屋の息子四郎吉のトンチ比べの様子がほほえましく、これぞ「佐々木政談」と心にしみ入ります。
外は陽も暮れライトが九雀さんを照らしだんだんと九雀ワールドになっていきます。ここで中入りとなり、ホッと一息タイムでは手作りスィートポテトとお茶が配られ美味しい時間でした。
最後の演目「質屋蔵」は質屋の三番蔵にゆうれいがでるといううわさで、質屋の旦那からお化けの正体を見極めるように言いつけられた気弱な番頭さん。連れには酒樽、たくわん樽、味噌樽等の悪事をべらべらとしゃべってしまったちょっと間抜けの熊五郎。この二人が深夜の三番蔵の騒ぎを盗み見てしまいます。そこで突然「ドカーン」と生の鐘や太鼓の音が鳴りひびき静かに聞き入っていた私達一同もびっくり!
「わあっ!」という声が上がりました。お囃子さんとの息の合った演出で臨場感たっぷりです。中では質入れした者の気が残った物たちが何やら大騒ぎ。そこに質草の掛け軸の中から菅原道真が現れます。「東風吹かば 匂いおこせよ梅の花 主なしとて春を忘るな」と番頭に歩み寄り、質流れにならぬように質入れした藤原さんに利上げをせよと伝えてくれと請い、道真公が「又流されそう」とのつぶやきでおしまいとなりました。新春の候にピッタリの噺で年の初めに笑って笑った二時間でした。
お囃子の岡野 鏡さんは若さいっぱいの女性でびっくり、意欲満々でこんな方がいるなら伝統芸能も大丈夫とうれしくなりました。
九雀さんが昼夕に六席も演じるのは体力もいるなぁと思っていましたら、日頃から体を鍛えていらっしゃるとか、真面目そうな九雀さんならではと思った次第です。「笑う門には福来る」と言います。笑うことは健康にもよいと聞きます。「笑顔施」(わがんせ)という言葉があるそうです。今年は、笑ってよい年で過ごせそうです。
九雀さん、九ノ一さん、岡野 鏡さんありがとう。又、桜の庄兵衛で会いましょう。